|
![]() ![]() ![]() |
|
|
1日に放送となった第1話は、以前から話題となっていた新キャラクター・レベッカとルパンの結婚式という波乱を予感させる幕開けで始まった。物語の結末はアニメを見ての通りだが、MI6の捜査官・ニクスとともに、彼女が今後どうストーリーに絡んでいくのか気になるところ。往年の『ルパン』を彷彿とさせるアクションはもちろん、オープニング映像では、先のインタビューで浄園祐プロデューサーが明かしていたセル画によるアナログな絵とデジタルを対比させるようなシーンも登場し、30年ぶりのTVシリーズに対するスタッフの意気込みを大いに感じさせた。
総監督として本作の制作を指揮している友永和秀氏は、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)のカーチェイスシーンなどを手がけた人物。本稿では友永氏にインタビューを行い、作品のアクションや映像に込められた秘密、そして30年ぶりのTVシリーズとして、視聴者を楽しませるために用意された仕掛けの数々を明かしてもらった。
――今回、30年ぶりとなるTVシリーズ『ルパン』のジャケットの色は青。これには何か理由があるのですか?
前提として、かっこよさを追求した結果というところがあるのですが、舞台となるイタリアでアンケートを採ったところ、ブルーが人気だったことも理由です。ほかの色もそれに合わせて調整して、背景などもイタリアのブルーを生かした色彩にしました。明るい日差しの国なので、コントラストも強めになっています。物語の舞台としては、旧作のようにルパンたちが世界中を旅するというのはやめました。今は、気軽にどこへでも旅行することができる世の中ですからね。それよりも、イタリアならイタリアで舞台を限定して、そこで濃密な画面を作り、場面設定していったほうが説得力を出せるのではないかと判断しました。事件にしても、なぜそこでそんなことが起こったのかという"必然性"を描くことができますからね。
――第一話から登場したレベッカ、そしてニクスと新キャラクターの活躍も気になります。
どちらも、ルパンたちといい対比ができる位置づけのキャラクターとして登場させています。ルパンは自由で、計算通りにいかないキャラですが、逆にニクスは緻密に計算するクールな性格。人情味がある銭形とも対照的です。レベッカはくだけたギャルで、不二子が大人の女性なのに対して、おもしろい対比になっています。女性2人のファッションについては、特に若手にアイデアを出してもらいました。
――提案されたもので、びっくりしたアイデアはありましたか?
服装に関してはあまり何も言わず、全体のバランスと動かしやすいかどうかで判断していました。あまり複雑なものだと後で大変なことになっちゃいますからね。不二子もレベッカも毎回同じ服装は使わないようにしていたので、先にシナリオを読んでイメージを挙げてもらって、コスチュームを用意していました。中でも、いろいろなアイテムがあるのには苦戦しましたね。僕は、スマホは使わずガラケーしか持っていないんですよ(笑)。そこはまったくわからなかったので、デザインはお任せしました。
――今回、友永さんが中心となって制作される『ルパン』ですが、友永さんと『ルパン』との最初の出会いについて教えてください。
僕が最初の『ルパン』を見た時代、アニメはまだまだ子ども向けのものでした。そういう意味で、『ルパン』はハードボイルドで女性も色っぽいし、アイテムも非常にマニアックで、ストーリーもそれまでのものと一線を画すような"大人向け"の作品だったこともあり、初めて見てびっくりしたのを覚えています。でも今回は特に"大人向け"と意識はせず、『ルパン』のテイストを踏襲しながら、新しい味付けをして作り上げていきました。画面作りでも3Dを取り入れています。ただ、今のアニメはデジタルで、線が均一なものばっかりだから、絵のテイストでは昔のセルの感じのものを入れる試みも行っています。
――今回の新TVシリーズの制作にあたり、参考にされたシリーズはあるのですか?
僕がインパクトを受けたのはTV第1シリーズです。『ルパン』はなんといっても振り幅が広いんですよ。シリアスな部分があるかと思えば、ズッコケたり、ミスやったり、ドタバタ慌てたり。作戦に失敗すると非常に情けないポーズでウイスキーを飲んでいたりとかね。そういうたくさんのものが一人のルパンという人格の中に入っていて、そのシーンごとに違ったポーズや表情を見せるのが魅力なのだと思います。
――それだけ懐の深いキャラクターってなかなかいないですね。
『ルパン三世』のTV第1シリーズ(1971年~1972年)は、前後二つに分かれてましたよね。おおすみ(正秋)さんの時期と、途中から高畑(勲)さんと宮崎(駿)さんが入ってきた時期と。この2人が入ったことで方針が変わって、作風がマンガっぽくなったんです。でも僕は、おおすみさんの『ルパン』も、高畑さんや宮崎さんが入った後のものとあまり違うとは思わないんですよ。それも『ルパン』だなと納得できるというか。『ルパン』というのは、それだけの深さを持つキャラクターなのではないでしょうか。
だから、TV第2シリーズ(1977年~1980年)に参加が決まって、「あの『ルパン』をやれるぞ」と喜んでいたのですが、このルパンはあっけらかんとしていて、「第1シリーズとはちょっと違うテイストだな」と思ったりしたこともありました。今回のルパンはどちらかというとTV第1シリーズに近く、あまりバカバカしいことは控えて、もうちょっとシリアスな部分があってもいいかなと思っています。ストーリーにもシリーズを通した裏設定もあるので、その設定に触れるところはかなりシリアスになっています。裏設定についてはまだあまり話せないんですけどね(笑)。
――今回のTVシリーズを作る上で、"軸"にしたのは『ルパン』のどのような部分でしょうか?
「5人のキャラクターの違い」ですね。これは脚本の打ち合わせをして、だんだんそうだなと思ったところです。ルパンは、いつも女の子を追いかけて自由に生きています。次元はルパンの相棒としてある程度一緒にいて、女の子にはちょっと奥手だけど、銃の腕前は一流。五ェ門はストイックに生きていて、いつもくっついているってわけではなく場合によってはルパンと対決することもある。不二子は、本当はルパンのことが好きなのかもしれないけれども、今のところそんなことはおくびにも出さず、自分の利害がある時だけパッと寄ってきたり、また裏切ったりする。それぞれがいつもくっついているというわけではなく、何か起こると必要に応じて集まるという関係性、それぞれの性格や立場の違いが物語に深みを与えて、バックストーリーも感じさせてくれるのではないかと思っています。そのために、TV第2シリーズのように5人いつも一緒というのは避けていますね。
加えて、今回はストーリーもバラエティーに富んでいます。シリーズの中でのテーマはあるものの、それぞれのストーリーは5人ほどのライターさんが持ち回りで担当し、各自の個性に沿ったエピソードを作っています。中には、ちょっと不思議なストーリーもあったり、それから泣かせるようなものもあったり。それからハチャメチャでアクションだけの回もあったり、サスペンスもあったりと多様です。それに、短い時間の中にも伏線を張って展開させるなど工夫も凝らしていますし、セリフもなかなか粋な言い回しが多いんですよ。あまり説明しないような、「ここはこういうことになっているんだろうな」と想像させるものなど、非常によくできている。含みがあるセリフだと、絵を作る側もその時の表情が、キャラクターの感情に対して適切なのかをその都度確認しながら作業していきました。
――作品を拝見して、屋根を駆けまわって落ちそうになったりと、『ルパン』ならではのアクションシーンがちりばめられていることに感動しました。
それは、『ルパン』の"命"ですから。ルパンたちは、高低差があるところで現実には考えられないようなアクションをやったりします。でも、その動きには破綻がなく、理屈にのっとって動かすように気を付けています。アニメーションですから、誇張になるところも登場しますが、物やキャラクターが動く時の"重量感"はできるだけ表現したいなと思っています。それができていないと、上から操られているみたいにウソっぽくなりますからね。具体的には、飛び上がる時はぐっと沈んで、飛び上がると上で止まる動きなどですね。「慣性の法則」も、アクションをやる上では押さえていないとウソになっちゃいます。とはいっても、時々は重力を無視したりはしちゃいますけど(笑)。崖から落ちた途中でバタバタしたりとか、ルパンがよくやりますよね。
――友永総監督は、そういったアクションのパイオニアだと思うのですが、参考にされてきたものはあるのでしょうか?
昔の映画はたくさん見ましたね。アメリカのマンガの『トムとジェリー』も好きなので、ひょっとしたら動かし方でも影響を受けているのかもしれません。あの破壊的な動きとか、オーバーな動きとかね。走り回って止まる時に、「キュキュキューッ!」とブレーキをかけたりするのが、マンガっぽいけど現実味を感じさせるんですよ。そういうところは『ルパン』にも取り入れているんじゃないかな。
『ルパン』のアクションでは、車も大事な要素の一つです。『ルパン三世 カリオストロの城』以降、ルパンはフィアットに乗っていますが、あれはその時のルパンの心情を反映する車なんです。場合によっては「チョロQ」のように動いたりするでしょう? 少しマンガっぽいですが、あれは慌てているルパンの気持ちそのものなんです。ただ、それでもサスペンションをリアルに描いたり、タイヤの動きを逆にすることで、動きに存在感と本物っぽさを加えています。今回は車も3Dを使っているのですが、フィアットは手書きです。逆にパトカーとか最新鋭の車は3Dで無機質さを出して、そのコントラストを出せればと思っていますね。
■プロフィール
友永和秀(ともなが かずひで)
1952年4月28日生まれ、福岡県出身。
アニメーター。
OH!プロダクションを経て、1980年にテレコム・アニメーションフィルム入社。 TVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』の七色星団の決戦シーン、『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)のカーチェイスのシーン、『銀河鉄道999』(1979年)のクライマックスシーンを描き、高い評価を受ける。『ルパン三世』ではTV第2シリーズで原画を担当した。
|
≪ 【うたわれるもの 偽りの仮面】第1話の先行画像とあらすじ【ネタバレ注意】 | TOP | 【うたわれるもの 偽りの仮面】特報映像 第一弾、第二弾【動画あり】 ≫
≪ 【うたわれるもの 偽りの仮面】第1話の先行画像とあらすじ【ネタバレ注意】 | TOP | 【うたわれるもの 偽りの仮面】特報映像 第一弾、第二弾【動画あり】 ≫